HiraiToshiyukiのブログ

映画と読書

悪は存在しない

 すごい映画でした。さすが濱口監督。映像の力がものすごいです。脚本も音楽もすごい。ストーリーはあまりありません。都会と田舎、人間と自然の対立のように見えて、そうでもない。田舎に住んでいる人が正しいわけでもない。自然からみたらここにいる人たちも人間である以上対立するもの。

 開発しようとする都会の人たちも個人的には悪い人ではない。組織のなかで精いっぱい誠実に仕事をしようとしている。軽薄そうなコンサルタントも悪いというより仕事としてこうなるよなという感じ。

 しかし映像の力で常に画面に不穏な空気が漂っている。会話の面白さを感じるシーンも随所にあるが、何かが起こりそうな雰囲気をまといながらで進んでいく。何が正しくて何が悪なのか。

 そしてラストについに何かが起こる。映画史に残るような、答えを観客に丸投げするような。そんな感じで唐突に終わる。簡単に分かると思うなよ!そんな映画体験でした。役者さんも知らない人ばかり。あまり演技には重きを置いていない感じで、これぞ作家性!面白い。