とある田舎町に新しい博物館をつくるために博物館技師がやってくる。
その博物館の名は「沈黙博物館」。収蔵品は全てこの村で亡くなった人の形見。
それも遺族から譲り受けるのではなく、ある一人の老婆が故人の形見に一番ふさわしいものを盗ってきたもの。何十年にもわたって収集されてきた膨大な数の形見の品々。
技師はひとつひとつ老婆から話を聞いて整理をしていく。庭師の鋏、医者のメス、占い師の紙、片目だった男の義眼などそれぞれにエピソードが語られる。
もし自分が死んだら何を飾られるのだろう、それにはどんなエピソードが語られるのだろう。そんなことを考えさせられました。
整然と並べられた形見たち。そして誰も訪れることのない博物館。まるでこの世のできごとではないような、静謐な物語でした。